LET62の発表

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 こんにちは。プロジェクト代表者の鬼田です。随分と久しぶりの投稿になってしまいました。

 

 これまで、2021年度、2022年度と重ねてきた議論をもとに、ついにプロジェクトの成果報告を開始しました。その第1段として、87日(月)から9日(日)にかけて、早稲田大学戸山キャンパスにて開催された外国語教育メディア学会(LET)第62回(2023年度)全国研究大会にて、わたしたちのプロジェクトメンバーが公募シンポジウムを行いました。当日、シンポジウムに参加していただきました先生方,ありがとうございました。この場で改めてお礼申し上げます。

 

 当日の発表資料はこちらからダウンロードしていただけます。シンポジウムでは、まず代表者のわたしが再現可能性問題の概要を説明したのち、本プロジェクトで採用しているベイズ統計によるアプローチについて、草薙先生からの説明がありました。外国語教育研究において、ベイズ統計によるデータ分析が行われることは少ないですが、今回の学会発表の中でもベイズ統計を用いた発表もあり、徐々に市民権を獲得しているのではないかと思います。草薙先生の発表に続き、今回のプロジェクトで実際に再現可能性に取り組んだ3つの実証研究について発表を行いました。

 

 1つ目は、星野先生によるQian2002)の再現です。Qian2002)の研究は、外国語のリーディングにおいては、語彙知識の広さと深さの両方が重要であると主張するものです。今回、星野先生の研究では、Qian2002)の論文で報告されている記述統計量をシミュレーションによって生データを再現し、元論文で報告されている結果が再現されるのかを検証しました。その結果、元論文の結果はおおむね再現されることが確認できました。

 

 2つ目は、磯田先生・大和先生による磯田(2009)の再現です。元論文である磯田(2009)はプロジェクトメンバーである磯田先生ご自身の過去の研究です。磯田(2009)では、特定のトピックについて1分間英語で話し、ペアの相手がその発話文の数を数えてフィードバックすることを繰り返し、徐々に1分間で話せる文の数を増やすことにより、大学生が英語で話すことへの抵抗感が低減されたとする論文です。今回、磯田先生・大和先生による研究では、元論文と同じ方法で新たにデータを取得し、元論文と同じ結果が得られるのかの追試を行いました。その結果、一部、元論文の結果とは異なるものの、結果はおおむね再現されました。

 

 最後は、山内先生によるVandergrift1997)の再現です。Vandergrift1997)では、外国語のリスニングにおいては、その言語の習熟度の違いによって、認知方略やメタ認知方略の使用傾向が異なることが示されました。山内先生の研究では、実験に使用するリスニングの材料、分析方法を変更した上で、元論文と同じ結論に至るのかを検証しました。その結果、元論文の結果は再現されないことが示されました。

 

 以上、3つの実証研究について、報告を行いました。私の進行の下手さから最後のQ&Aの時間をあまり取ることができず、会場に来ていただいた先生方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。その中でも、発表内容についてのご質問、プロジェクト全体についてのご質問などをいただき、参加していただいた先生方と少し議論の時間を持つことができました。

 

 本プロジェクトでは、今後も成果発表をしていきます。再現性問題にご興味をお持ちの先生方におかれましては、またご都合が合えば,ぜひ我々のイベントにご参加くださいますようお願い申し上げます。